決算審査特別委員会④ 減債基金とアリとキリギリス
※正式な議事録ではありません
2款2項8目財政管理費、財政読本作成委託料について伺います。
設問1
毎年発行されている財政読本「財政のはなし」の発行目的を伺います。
答弁1
財政読本についての御質問でございますが、
市民の皆様に予算の仕組みや本市の財政状況などにっいて分かりやすく説明し、多くの市民の方に関心を持ってもらうことを目的に作成しているものでございます。
財政のはなし(令和7年度版)https://www.city.kawasaki.jp/230/cmsfiles/contents/0000178/178473/zentai.pdf

設問2 減債基金のことを書いているの?
令和6年度の「財政のはなし」では12ページに「市債を返すお金はどうやって用意するの?」が掲載されています。そこではアリとキリギリスが登場し、アリは30年後の一括返済に備えて計画通りに貯金し「末永く幸せに暮らしました」。一方でキリギリスは「借金を返済できず生活もくるしくなりました」と描かれています。このページは減債基金のことを説明しているという理解でよいでしょうか伺います。
答弁2
財政読本についての御質問でございますが、
当該ページにつきましては、満期一括償還で発行した市債の償還に備えて、減債基金に計画的に積み立てることについて記載したものでございます。
設問3 減債基金への積立ルールの根拠は?
減債基金についての記載とのことです。「計画通りに貯金」という部分について、以前の答弁では減債基金の積み立て額は「満期一括償還地方債発行額の30分の1」ルールに則り取り組んでいくとのことでした。その根拠はなんなのでしょうか伺います。また近隣政令市の横浜市や相模原市もそのルールを一貫して実施しているのでしょうか?伺います。
答弁3
減債基金についての御質問でございますが、
本市の減債基金への積立につきましては、総務省通知を踏まえ、世代間の公平を図り、積立不足が生じないよう、計画的に行っているところでございます。
各政令市の積立ルールにつきましては、総務省通知を踏まえながら、各都市の実情に応じて、市債の償還期日までに積立不足が生じないよう、計画的に積立を行うためのルールを設けているものと認識しております。
総務省通知https://www.soumu.go.jp/main_content/000749116.pdf

設問4 他都市はキリギリスなの?
総務省の通知は国の減債基金に係る「国債の60年償還ルール」に準じて発出されおり、この満期一括償還、積立ルールありという方式は発行者コストが大きくなると指摘する経済学者もいます。理由は償還ルールの為に無用な発行をするからとのことです。実際に国際標準では満期一括償還、返済ルールなし、つまり国の実情に応じ各国が計画的に返済プランを組むのが基準となってきており、先進国でもかつてあった減債基金は現在、存在しないとのことです。2点お聞きしたいと思います。総務省の通知が変更になれば本市も同様に変更するということでよいのか伺います。アリとキリギリスのイラストは減債基金のことと答弁がありました。他都市については総務省の通知を踏まえとしながら通知通りの積立を行っていない都市が多数を占めています。30分の1ルールを行っていない他都市はキリギリスという解釈で良いのか伺います。
答弁4
減債基金についての御質問でございますが、
減債基金への積立につきましては、世代間の負担の公平性を図るため、計画的に行うことが重要であると考えております。
仮に総務省通知の内容が変更された場合には、その趣旨を踏まえながら、積立不足が生じないよう、適切に対応してまいりたいと考えております。
また、当該ページのイラストにつきましては、満期一括償還で発行した市債の償還に備えて、計画に基づき積立を行わない場合には、世代間の負担が不公平になることや、次の世代に負担を先送りすることを表現しているものでございます。
設問5 揶揄するような表現はやめるべきでは?
キリギリスは他都市のことを指すのか?という質問に対してお答えいただけませんでした。繰り返しになりますが、減債基金の30分の1ルールを全うしなかったキリギリスは「生活苦で家に住めなくなる」とまで記載されています。そのルールの根拠は総務省の通知、一方でそのルールは今では国際基準でも採用していないものです。30分の1ルールを取り出して他都市を揶揄するかのような表現は改めるべきではないでしょうか、伺います。
答弁5
財政読本についての御質問でございますが、
財政読本は、イラストや図を使うことで市民の皆さまに読みやすく、親しみやすい内容としておりまして、当該ページにつきましては、満期一括償還で発行した市債の償還に備えて、計画的に積立を行うことの重要性を一般的に広く知られている物語を例に挙げて表現しているものでございます。
設問6 川崎市独自の理念、方針は?
アリとキリギリスの教訓は「勤勉と怠惰」と言われています。減債基金を30分の1ルールで積立ないのは「怠け者」といった他都市、市民に誤解を招くような記載は改める様、求めておきます。最後に局長に伺います。総務省通知の前に思考停止になっていないでしょうか。川崎市の財政力、実情に見合った独自の積立、市債の返済計画を検討するのが皆さんのお仕事だと思いますが、そういった理念、方針はあるのか伺います。
答弁6
減債基金についての御質問でございますが、
減債基金への積立につきましては、市債の発行目的等に鑑み、世代間の負担の公平性を図り、将来の市民の皆様に過度な負担を強いる事態が生じないよう、計画的に行うことが重要でございます。
今後につきましても、必要な財源を確保し、着実に積立を行ってまいります。
要望 過度な積立は市民生活に影響する
減債基金の積み立ては世代間の負担の公平性という答弁が何度かありました。世代間の負担の公平性を図る指標として「将来世代負担比率」というものがあります。令和5年決算時、本市は33.4%となっていますが、今年度を含め3年連続で減債基金を減少させる横浜市は21.1%となっており、将来世代負担比率は本市より低い状況となっています。一つの指標ですが、30分の1ルールの積立が「世代間の公平性」には必ずしも繋がっていないと読み取ることもできます。答弁にあった「将来の市民の皆様に過度な負担が生じないよう計画的に」という点はもちろん理解できます。しかし24年度決算で残高は政令市の1.6倍、2940億円に及びます。30分の1ルールに固執した過度な積立は今を生きる市民の生活に影響を与えるということも指摘させていただき、今後も減債基金については議論を重ねていきたいと思います。