日本共産党
川崎市議会議員(中原区)

市古次郎

ブログ
2020年3月18日

下水と河川、何がそんなに違うのか?検証委員会(第3回)②「今後の対策について」思うこと。

 13日の検証委員会では、当然ながら今後の対策も検討されています。

 前提として、この検証を踏まえ、7つの課題を挙げています。

①大規模災害時における活動の応援態勢の構築

②戸当り部への異物混入(山王排水樋管ゲートが閉鎖を開始して12時間を要 したのは、異物のかみこみが要因として挙げられているため)

③ゲート開閉操作の容易化(異物が混入しても容易な開閉操作を可能とする)

④河川高水位時における捜査員の安全確保

⑤迅速な情報収集・提供と確実なゲート操作

⑥河川水の逆流防止

⑦内水の排除

短期的な対策内容(今夏の台風シーズンまでに実施)

【1】樋管ゲートの改良

(1)開閉器の電動化(浸水被害のあった五カ所全ての排水樋管)

(2)水位差により自然開閉が可能となるフラップ機構付ゲート(設置条件として、現在補助ゲートがあることが必要⇒宮内・宇奈根地域)

(3)河川側の一部ネットの目幅を縮小し、戸当り部の異物混入を防止

山王排水樋管ゲート、河川側ネット

(4)樋管ゲート室の扉体上部の開口についての改良

樋管ゲート改良による対策効果》

 異物の混入を防止し、より確実なゲート操作及び内水排除が可能。(課題②③④⑥⑦に対応)

【2】観測機器の設置

(1)監視カメラの設置(全体・ゲート上部)

(2)流速・流向計の設置

(3)水位計の設置(内水・外水)

《観測機器設置対策の効果》

 迅速かつ確実で効果的な情報収集による河川水の逆流防止・内水排除の判断及び捜査員の安全確保が可能。(課題①④⑤⑥⑦に対応)

【3】遠方制御化及び停電時のゲート操作対応

  • 限られた人員で複数箇所の管理・操作を行うには、観測機器設置及びゲート電動化等による遠方からのゲート操作が有効と考えられるため、遠方制御化を行なう
  • 停電時、通常時電源供給を行なう引込柱に発電機を接続し電源供給を行えるように対策(操作員到着までの対応として操作盤内に蓄電池設置)。

《遠方制御化及び停電時のゲート操作対応対策効果》

 限られた人員で確実かつ迅速なゲート操作及び操作員の安全確保が可能。(課題①④⑤⑥⑦に対応)

【3】内水排除のための排水ポンプ車導入

 短期間で浸水被害を軽減できる暫定的な対策として、排水ポンプ車の導入

 山王地域では多摩沿線道路の片側車線を封鎖しての配備を想定しているとのこと。

 加えて、状況により多くの排水ポンプ車を必要とするケースも想定されることから、国、他の自治体へ支援要請を行うため、広域的な連携構築を行なう。

《排水ポンプ車導入の効果》

 状況に応じた浸水被害の軽減及び内水排除が可能(課題⑦に対応)

排水樋管ゲート操作手順の見直し

(1)排水樋管ゲート操作手順見直しの歴史(山王地域)

  昭和59年3月

  • 樋管ゲートは通常「閉鎖しない」
  • 多摩川水位上昇時においても、内陸に降雨または降雨の恐れがある場合は閉鎖しない。ただし、降雨時であっても、河川管理者より閉鎖の指示があた場合はこの限りではない。
  • 内陸部に降雨の恐れがなく、多摩川の水位が上昇し、逆流水がオリフィス堰高を超える場合は樋管ゲートを閉鎖する。

 その後、約35年間、何度か細かい改定を重ねますが、ほぼ変更されることなく「降雨がある場合は閉鎖しない」という方針が継続されていたようです。

(2)見直しに向けた条件整理

 下水道は暗渠であり、順流・逆流の判断が難しく、また、過去、ゲート閉鎖した場合に浸水被害が生じていたこともあり、「降雨、または降雨の恐れがある場合はゲート全開を維持する」ことの前提条件としていたが、今後は気候変動に伴う河川水位上昇などに備える必要があり、観測機器の順流・逆流の情報による操作に見直すものとする。見直し後は、設置した水位計など観測機器から得られる情報を基に、河川の考え方も参考にして操作手順の改善を図っていく。

(3)操作手順案(観測機器導入後)

河川水位が樋管付近最低地盤高から-1.0mに達する
及び
逆流で全閉

 (4)操作員の退避基準

少し補足でも…

 見直しに向けた条件整理の中で「河川の考え方」という言葉、議会でも議論になりましたが、この言葉の意味は、平成30年4月及び令和元年6月に国土交通省から河川課宛に送られた「通達」のことです。

 平成30年4月の河川管理施設の操作規則には、第一章総則、第2条(操作の目的)で水門の操作は逆流を防止することを目的とする。

 また第三章水門の操作方法等、第八条では逆流が始まったときは、水門のゲートを全閉することとの記載があります。

 しかし、この通達はあくまでも河川課への通達であり、下水には採用しない。これは一貫しているようで、市長も3月4日の記者会見で、

http://www.city.kawasaki.jp/170/page/0000115066.html

「下水というものと河川の考え方って相当違う」

 と答えています。従って、報道もされた令和元年6月の国交省からの通達が、河川課から上下水道局の関係部署へ伝わっていなかったという指摘については、

「読ませていただきましたけど、 なぜこれを下水道のところに参考資料として送ったのかなと思うぐらいで、私も素直 に国からの文書を読むと、水防活動に関係ある人たちといったところで、上下水道局 に送ったこと自体が、ちょっと、うん? という、そういう印象は受けております。 多分、国交省も、発出したほうとしても、その認識はないんじゃないかなと思います けど、それは確認したわけではないですけれども、素直に読むと、下水道局?という 感じはします。」

 と市長は記者会見で続けています。同じ多摩川に通じているのに、

下水と河川、何がそんなに違うのか?

  •  山王排水樋管ゲート⇒下水(10月12日22時30分頃閉鎖開始…約12時間かけて閉鎖)
  •  平瀬川水門⇒河川(10月12日11時閉鎖)

 これは、私の12月議会の一般質問の答弁にも少しありましたが、上下水道局側の見解では、河川は水が見えるのに対して、下水は暗渠。ここが大きな相違点ということのようです。今回の観測器(水位計、流向・流速計、監視カメラ)の設置によって、暗渠である下水菅の「見える化」を図ることにより、「河川の考え方」も参考に、約35年間、頑なに貫いてきた「降雨がある場合は閉鎖しない」方針を見直すに至ったと考えます。

 しかし、ゲート操作員の安全は別問題です。樋管ゲートは土手に、多摩川ギリギリに設置されているわけですから、暗渠という根拠は通用しません。令和元年6月の通達は、市長が「上下水道局 に送ったこと自体が、ちょっと、うん?」と言った通達の中身は、「操作員の避難」検討についての改正が主な通達でした。

  • 避難を検討する水位について
  • 避難を検討する水位の考え方
  • 避難経路の確保について
  • 避難の判断
  • 避難時の樋門等の操作

 等が示されている通達だったわけです。今回の中間とりまとめ③で「操作員の避難基準」が示されましたが、こういった安全面でのガイドラインは、下水だろうと河川だろうとあらかじめ定めておくべきものであり、この通達に関しては、上下水道局の関係部署へしっかり周知され、検討されておくべきものだったということは指摘させていただきます。

対策による効果の検証(山王地域)

98%減。 

 しかし、まだそれでも2%の浸水地域が発生する可能性があります。

中長期対策の方向性

 雨水貯留官、雨水調整池、大規模放流幹線、ポンプ施設、ゲートポンプ…東京都の首都圏外郭放水路、横浜市の多目的遊水池の新横浜公園、東京都、横浜市で多く採用されているゲートポンプ、西にも東にも参考にするべき施設は多くあります。ぜひ検討、検証を続けていただければと思います。

最後に

 今月の予算審査特別委員会で井口議員が指摘したのは、国交省が行なう多摩川の浚渫が、最短でも10月からしか行えないこと。つまり、浚渫が行なわれないまま、多摩川の確実な流量の確保ができないまま、今年の雨期、台風シーズンを迎えることになります。

中州が形成されている山王排水樋管付近の多摩川

 18日から、市民の方々からの意見聴取も始まっています。市が行なったシミュレーションは今の多摩川の状態を考慮しているのか?今年の出水期は本当に大丈夫なのか?

 検証、対策への検討はまだ終わっていません。


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