日本共産党
川崎市議会議員(中原区)

市古次郎

ブログ
2023年9月16日

プールの水の流出損害を先生に直接請求することについて(代表質問より)

9月14日、日本共産党川崎市議団の代表質問を務めさせていただきました。

その中で、プールの水の流出損害を先生へ直接請求したことについて、代表質問の質疑を中心に、ここまでで明らかになったことをご報告させていただきます。

何がおきたのか?

以下が市の報道発表資料です。

 プールの注水に際し、止水作業に失敗し、5日間注水し続けたことで200㎥の水を流出し損害額190万円の損害が発生。その5割にあたる95万円を校長と操作した教員に直接請求しました。

経過

  1. 11時頃 教員がプール開きの準備のため、注水スイッチを操作した際、同時にろ過装置を作動させたため、職員室の警報音が鳴った
  2. 警報音を止めるためにブレーカーを落とした。
  3. 17時頃 止水のため注水スイッチを「切」にしたが、ブレーカーが落ちたときに電源が喪失していたため作動せず注水が継続。
  4. 五日後、用務員が注水が続いていることを発見。

 市は「止水を確認しなかったこと」「正しい操作方法の確認を怠った」などの過失があるとして民法709条の「故意または過失がある場合は賠償責任を負う」という規定に基づき賠償責任を課したとしています。

教員の責任についての教育長答弁①

「教員の責任についてでございますが、当該小学校のプールにっきましては、注水をする際、スイッチを「切」から「自動」に切り替えるだけで、一定の水位になれば自動で止水する機能を有しており、通常であれば、流出事故が発生する可能性はございません。しかしながら、本件事故においては、水がまだ溜まっていない状況で、注水開始時に、ろ過装置のスイッチも入れたことから警報音が鳴り、これを止めようと、プール操作に係る電源ブレーカーを落としたもので.ございます。この誤操作により、全ての操作に係る機能が喪失したほか、止水作業時にプールの吐水口から水が止まっているかを確認しないまま、その場を離れたことにより、大量の水が流出したものであり、これらの行為には過失があると判断したものでございます」

 水が溜まっていない状況でろ過装置のスイッチを入れたこと。この誤操作が過失であるという答弁です。

検証

 市の報道発表には記載がない事実関係を補足します。まず、操作した先生はこの学校プールで初めてのプール開き準備(注水作業)だったこと。では先生は何に基づいて操作したのか、議場でも使用した画像で検証していきます。

 プールの操作室に操作マニュアルはなく(その後も発見されていません)、添付の「プールの水の入れ方」という用紙が一枚置いてありました。この用紙のみで作業を開始してみます。

 まず、年に一度のプール開きの準備のため、操作版を開けブレーカーを入れます。用紙を拡大するとスイッチはたった2つだけ。

沪過スイッチと注水スイッチのみです。

 まず、説明書きの通り、注水スイッチを右に捻ります。

 次に、沪過スイッチも同様に「自動」にします。教育長答弁では「水が溜まってないのに沪過スイッチを作動させたこと」が誤操作、過失だったとありますが、唯一の操作説明用紙の写真には

 沪過スイッチの位置は「自動」加えて「こちらはいじりません」という注意書きも。つまり、操作した先生はこの一枚の用紙通りに作業したことになります。これを誤操作と言い切る…?

 その後、沪過装置はいわゆる空だきとなり「警報音」が鳴ります。先生は警報音を止めに行きますが「こちらはいじりません」という注意書きもあるわけですから沪過スイッチに触れない判断をしたことは想像がつきます。しかし注水スイッチを動かしても警報音は止まりませんし、あとは最初に操作したブレーカーを落とすことによって「警報音」が止まったわけです。

 ちなみに、事前の調査で昨年も別の先生がプール開きの作業をした際、警報音が発生。そのときは警報音を止めず何もしなかったため、水が注水され空だきが解消となり警報音も止まったとのことです。

 つまり、操作室にある用紙通りに操作すれば、誰がやっても警報音が鳴る状況だったということになります。

 ちなみにちなみに、操作マニュアルがないわけですから、警報音が鳴った際の対処法もどこにもありません。

 改めて、先生の過失について教育長に質問。

教員の責任について教育長答弁②

「本事案につきましては、事案発生後に、十分時間をかけて、当該教員や管理職からの聞き取りや、現地での確認を行うとともに、業者からの説明等も受けながら、事実関係を精査してまいりました。その上で、教員と校長の過失を認定したものであり、賠償請求に至る他都市の事例にっいても丁寧な説明に努め、理解を得ているものと考えており、そのことは、私が校長と面談した際にも確認しております。また、当該教員の考えや状況についても面談時に共有しており、本市の考え方にっいて、理解が得られていることを認識しております。注水作業を始める段階から、作業の終了、その後の警報発報後の対応の各段階において、いくつかの判断ミスが重なったことにより、本事案の発生に至ったものであり、過去の裁判例と他都市の事例から、過失に対する相賠償賠償を求めるものであると考えております」

行政の責任について

 次に行政の責任について、東京、横須賀等、全国でプール流出問題がおきており、同じような事故が発生する可能性があるのに、何かおこるまで何ら対策を取らなかった市は行政としての責任を果たしたと言えるのか教育長に問いました。

行政の責任について教育長答弁

「プールの給水操作につきましては、これまでも毎年実施している循環浄化装置等の保守点検時に、受託業者から学校の教職員に対して取扱いの説明を行ってきたところでございます。しかしながら、給水装置等の操作マニュアルが整備されていなかった約4割の学校では、教職員間の引継ぎゃ操作盤の表示などに基づく操作を行っていた実態もございます。
教育委員会といたしましても、発生予防への配慮が十分ではなかったと認識しでおりますので、今後、確実に作業ができるよう、「学校水泳プールの安全管理マニュアル」を一部改訂し、研修会等を通じて、複数の教職員による止水の確認等を徹底するとともに、各学校において操作マニュアル等の整備及び内容の確認・更新なども行い、再発防止に向け努めてまいります」

※本件の先生は事故当時、受託業者の取り扱い説明は受けていません。

使用者責任について

 最高裁判例では、労働者側の賠償責任を問う前に、使用者側の責任について慎重に審議することを求めています。判例では、業務に伴い発生する危険について、保険など損失の分担、事前の説明など労働者への配慮、危険・損害を回避するための措置が十分だったのかという「危険責任の原則」が問われています。

 この危険責任について、例えば東京都の通知では、まず、作業者とは別にプール管理責任者を指定し、管理者が給水開始・終了時の報告の確認、給水開始時の確認では、複数の教職員から確認印を受けること、給水終了時刻を過ぎてもなお給水終了の報告がない場合は作業者に対して確認を行い、不必要な給水を防止することとしています。川崎市は、このような管理のための通知を出しているのか、又このような危険回避の措置をとるように指示をしているのか、教育長に伺います。

 使用者責任について教育長答弁

「プールの管理についてでございますが、「学校水泳プールの安全管理マニュアル」においては、プールの安全管理責任者を明示しておりましたが、安全面、環境衛生面での管理が中心であったため、今回の事案を受けまして、日常点検りスト」を活用して、給水開始終了時の具体的作業等について校長に報告するとともに、複数の教職員による確認を徹底することとし、各校長宛てに通知したところでございます」

※使用者責任、特に危険責任について実施していたのか聞いたのですが、本件発生後に行なったことの答弁しかありませんでした。

最後の質問

 教員の責任について、答弁は「各段階において、いくつかの判断ミス」があったことを挙げています。しかし、取扱説明書もマニュアルもなく、不正確な用紙1枚で、警報の止め方もブレーカーの説明もなく、初めて作業する教員に業務を押し付けたのです。このミス、過失は教員の責任ではなく、行政側の責任とすべきではないですか、教育長に伺います。

 行政の責任について、答弁は「安全マニュアルを作り、管理者を置いて給水開始・終了時に報告する」としています。しかし、このマニュアルは先月(8月)、事故後に作ったものであり、結局、事故前は、東京都のような通知、マニュアル、管理責任者も防止策もなかったのです。これでどうして行政の責任を果たしたといえるのか、教育長に伺います。

教育長の答弁

 

 本件事故につきましては、事実関係を精査し、類似案件の住民訴訟の裁判例や他都市での事例を踏まえ、顧問弁護士とも協議し、過失があるものとして判断したものでございまして、行政側としても、損害の予防に関する配慮が十分ではなかったととなどを考慮し、損害額の5割を請求したものでございます。
 今後、こうした事故が発生しないよう、今回改訂した安全管理マニュアルに基づく取組の徹底をはじめ、教職員の負担軽減にも資する民間活力の活用等を含め、再発防止に向けた検討を進めてまいります。

最後の意見(抜粋)

 この間、教育委員会に市民から様々な質問が出されました。その中で、「教員のブレーカーを落とした」という過失について、「ブレーカーを落としたらスイッチが効かない状態になることは予見できなかったと思われる」と述べ、事前の調査でも

「今回の事案は故意や重過失には当たらない」

と回答しています。市が根拠とした民法709条は「故意又は過失の場合、損害賠償を負う」としていますが、最高裁判例では、使用者の責任が問われます。今回のケースでは、取扱説明書も東京都のような管理マニュアルもなく、不正確な用紙一枚で、事前説明もなく操作が初めての教員に業務をさせるなど、行政側の使用者責任を果たしていないことは明らかです。

 教員の人員不足は深刻となる中で、業務は際限なく広がっており、今回のようなプール管理という本来的な教員の業務とまで言えないような周辺業務に従事する中で発生したミスであり、教員個人の責任とすべきではなく、教員が業務に従事するなかで、故意または重過失でない限り、損害賠償を請求すべきではありません。

 今後の対応について、答弁の中で「安全管理マニュアルを徹底する」と述べていますが、これによる教員の負担増にならぬよう、教員とは別の職員を配置して行なうことを求めます。

最後に

 この代表質問を終えた翌日に、校長、先生側から全額支払いがあったと報告がありました。

 現場の先生方の判断を尊重はします。しかし、報道にある教育委員会の

「批判は受け止めるが、適正な判断だと考えている」

とのコメントは容認できるものではありません。これが、悪しき前例とならぬよう、またなんとか引き出した答弁「教職員の負担軽減にも資する…再発防止の取組み」について、今後も提案、及び注視して参ります。

 なおこの件に関するお問い合わせ先は、報道発表の通り教育委員会となりますので、子ども達が学ぶ学校への直接のお問い合わせはお控えいただきますよう、心よりお願い申し上げます。

 結びに、報道発表から今日までの約一ヶ月間、たくさんの声を上げて下さった皆さんに心から感謝申し上げます。

 引き続き。

以下、私のXでの関連ポストを時系列で添付いたします。

8月10日 第一報 https://x.com/jiro_ichiko/status/1689554083445932032?s=20

8月13日 弁護士の法的見解 https://x.com/jiro_ichiko/status/1690541073104543744?s=20

8月17日 教委からの回答 https://x.com/jiro_ichiko/status/1692115514053804167?s=20

8月20日 スペースにて https://x.com/jiro_ichiko/status/1692947337944215752?s=20

8月23日 寄せられ始めた抗議 https://x.com/jiro_ichiko/status/1694030810926706947?s=20

8月28日 市長会見 https://x.com/jiro_ichiko/status/1696124015046529081?s=20

※リンクが切れていましたので、関連記事を添付いたします。

教員が賠償は「かわいそう」に川崎市長反論 小学校プール6杯分の水出しっぱなしで:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

9月1日 弁護士の見解② https://x.com/jiro_ichiko/status/1697445149071278581?s=20

9月6日 報道機関へ届く教育現場からの声 https://x.com/jiro_ichiko/status/1699214032266551617?s=20

9月7日 東京都の事例紹介 https://x.com/jiro_ichiko/status/1699460467612389511?s=20

9月7日 法曹界からの声明 https://x.com/jiro_ichiko/status/1699699673492303983?s=20

9月8日 広がる署名 https://x.com/nanako_jcp/status/1699215574574989580?s=20

9月9日 請求しない他都市の事例(リポストより) https://x.com/misa1234misa567/status/1700478093792563201?s=20

9月12日 漏水の早期発見(豊中市の取組み) https://x.com/jiro_ichiko/status/1701548108927435228?s=20

9月13日 市民からの撤回署名 https://x.com/jiro_ichiko/status/1701970657154625973?s=20

9月14日 代用質問


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