日本共産党
川崎市議会議員(中原区)

市古次郎

ブログ
2020年11月2日

地域猫活動サポーター制度について

 多くの方が犬や猫の殺処分ゼロを望んでいます。

 しかし、その一方で、飼い主のいない猫(野良猫)によるトラブルも。

 実際に私にお寄せ頂いたご相談内容は(中原区への要望書から抜粋)

「○○地区では私たちが把握しているだけで100匹以上の野良猫が放置されたまま地域を徘徊していて、猫がお腹を空かせている姿に出会う都度、みかねて餌を与えている人がいる一方で、猫の糞尿で犯された家屋や庭先やゴミ置き場等の後始末に困惑、苦悶されている方など、およそ町内の環境美化に勤しむ私たちのモチベーション鈍化を招きかねない現象が起きています」

100匹…

糞尿で犯された家屋…

 センセーショナルな文言が入った要望書でありますが、毎日、対応に苦慮する方々が選んだ言葉であると鑑みれば、看過できない、死活問題であることがうかがえます。

解決策

①行政による保護

 動物愛護センターの職員の方が対象の猫を捕獲、保護するものですが、担当の方からお聞きした保護要件は以下の通り。

  • 親猫がいない、食事にありつけない等、自活することができない。
  • 重い病気、ケガ等で自活が困難。

 この要件でいきますと、今回ご相談の猫達は現状では保護対象となりません。というのが行政側の回答。担当の方の話を聞いている限り、保護は最終手段という消極的な印象を受けました。その背景として、外の猫は飼い猫か、飼い主のいない猫か判断がつきにくい、また30年ほど前は要望があれば概ね保護していた反面、年間2000頭以上の犬や猫が殺処分されていたとのこと(もちろん当時はまだ、野犬も生息していたとのことですが)。

 ちなみに、環境省のHPで掲載されているH30年度本市の保護実績、殺処分数は…

環境省統計資料http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html

 表が細かすぎて見にくいですが、所有者不明猫(野良猫)の引き取り(保護)数は、成熟個体1頭、幼齢個体282頭で併せて283頭。殺処分となってしまった猫は7頭。資料によるとこの7頭は、

譲渡することが適切ではない(治癒の見込みがない病気や攻撃性がある等)と判断された為

 殺処分となったとのこと。一番右の処分合計数は62と記載されていますが、その他の55頭は殺処分ではなく引き取り後の死亡と分類されています。

②心ある方による保護増やさない為の自費手術

 心ある方の中には野良猫に対し、自ら捕獲し、これ以上増えない様、動物病院で去勢・不妊手術を施し、保護する方もいらっしゃいます。市も補助金を設定していますが…

 この補助額では、オス去勢手術1万円~2万円、メス不妊手術2万円~4万円と言われている相場において持ち出しは必至となり、

「安く施術してくれる動物病院を探しながら、今までで数十万円以上出費してきたけど、仕事をやめたらとても続けられない」

「かわいそうだからと、餌をあげる気持ちは凄くよく分かるけど、責任を持ってあげて欲しい」

 という心ある方の実情、切実な声をお聞きしています。

 ちなみに、去勢・不妊手術を受けた猫の見分け方として猫の耳先が少しカットされています(参考画像は動物愛護センターに掲載されていた写真から)。

手術(麻酔)中にカットする為、猫も痛さは感じないとの記載もありますが…
はたして…
そんな真っ直ぐな目で見ないで…

 話は戻りますが、やはり今回のご相談内容の100匹近い猫ということになると、とても心ある方々のにお任せという状況ではなく、解決策にはなりません。

③地域猫活動サポーター登録制度

 依頼者の方と保健所へ相談へ行った際、行政側から提案されたのが地域猫制度。以下、制度について市の資料より抜粋してご紹介します。

 (1)目的

 地域住民と特定の飼い主のいない猫との共生を目指し、特定の飼い主のいない猫を減らし、地域環境の向上を目指す。

 (2)具体的な活動内容

  • 地域で問題意識を共有
  • 猫をきちんと管理して、被害を減らしていく
  • 地域で猫の管理をする方、地域住民の方、行政の協働で進めていく

 (3)進め方

 全国で初めて導入した練馬区の「地域猫活動」をモデルにH30年8月から同制度が始まりました。町会等の調整、猫捕獲専用ゲージの貸し出し、活動のアドバイス等、制度設計はほぼ同様のものですが、去勢・不妊手術費用の助成については、

本市:メス6000円 オス4000円

に対し

練馬区:メス10000円 オス5000円

 と練馬区の方が手厚い内容になっていますが、本市は市動物愛護センターに持ち込んだ場合無料となる為、優れているとも言えます。他都市の取組も調べてみましたが、無料で手術している事例は見受けられなかった為、特出すべき点かもしれません。但し、動物愛護センターは中原区にある為、例えば麻生区にお住まいの方が持ち込むには少々長い道のりとなります。H30年度サポーターに登録された方のうち、雄20頭、雌26頭は動物愛護センターではなく助成金で不妊去勢手術を行なっているという議会答弁もあり(令和2年3月2日定例会)、せっかく心ある方がサポーター制度に登録されても、他都市より優れている無料手術が利用されていない現状は今後も注視しなければなりません。

 制度登録数の推移は…

H30年8月~7件

令和元年度30件(年間23件)

令和2年度(10月30日現在)38件(8件)(新型コロナの影響も)

 担当の方の話では、まだまだ本市では始まったばかりの制度。今後も周知に務め、活動を広げていきたいとのこと。

課題

 さて、このサポーター制度が解決策となるのか、その地区に100匹の特定の飼い主がいない猫が生息するという本件の場合、多くの心ある方がこの制度に賛同し、サポーター登録となれば解決に結びつくかもしれません。しかし、実際に相談者の方は…

「制度は知っているが、やることが多すぎる…」

「猫の寿命を考えると、10年以上サポーターとして取組むことになる。そこまで責任を持てるかどうか…」

「やはり増えすぎてしまった場合、自主的な活動ではどうにもならない。保護要件の緩和も必要ではないのか?」

 ということをお話されていました。

 上に示した資料の中にある、地域の長などへの挨拶や説明、地域に配るチラシ案や活動報告書の作成等、活動内容を見る限り、登録を考える方々にとって負担を感じることは理解できます。また、猫を大切にしたいという想いが強いからこそ、慎重になるのも当然。加えて行政の保護に関しては、国も殺処分ゼロの取組を更に進める中で、2019年6月に動物愛護法が改正、それを受け神奈川県も「神奈川県動物愛護管理推進計画(改定素案)」を策定、今後5年後25%、10年後50%に犬・猫の引き取りを削減する方針(11月15日まで計画に対するパブリックコメント実施中)を示していることから、今後は保護要件がさらに厳しくなることは必至となりそうです。

神奈川県パブコメhttps://www.pref.kanagawa.jp/docs/e8z/pub/c8308674.html

まとめ

 動物愛護、殺処分ゼロの意識が高まる中で、地域で特定の飼い主がいない猫のトラブルは生まれています。その対処として、今まで保護を中心に対応してきた行政が方針転換をすすめるなか、個人の方が保護するとしても、数人の方がグループでサポーター制度を活用するにしても、結局、心ある方々に大きなウエイトがのしかかることになります。その方々の声を聞く限り、やはり懸念されるのは、

「助けたいんでしょ?じゃあお願いね♡」

 という、心ある方の

善意に丸投げ

 です。それでは根本的な解決になりません。

 今回、相談を頂いた方々については後日談があります。一緒に保健所で相談を進めるなかで、まずは担当の方に現場を視察して欲しいとお願いしました。

 数日後、視察の日取りが決まり、相談者の方も地域の方を十数名集め、視察が行なわれたとのこと。

 そこで行政の担当者は現場調査をはじめ、集まった住民の方々の声を聞き、その中で市の支援制度を説明。

 行政が住民の方々と一緒にこの地域の問題を解決していくという姿勢が伝わったのか、相談者の方から私の所に

「職員の皆さんよく話を聞いて、真摯に対応してくれたよ。信頼できる人達だね。」

 と喜びの声が届きました(わざわざご連絡ありがとうございます)。

 今後は町会とも相談しながら「地域猫制度」も含め、前向きに対応を検討されるとのこと。

 現地視察に行かれた行政の担当の方からも、わざわざご連絡頂き、

「今後も連絡を取り合い、時には現地に足を運び、提案、サポートしていきます。」

 とのこと。

 やはり、重要なのは、本市の地域猫制度の説明リーフにあります、

 地域で猫を監理する方、地域住民の方、行政の協働で進めていきます。 

 という文言。決して丸投げにならず、住民の方々、行政が一緒に寄り添った支援を継続的に行なうことが、野良猫の問題で悩む住民の方々にとって暮らしやすい地域となる近道だと感じています。

 また、地域猫制度の制度設計についても、本市ではまだ3年目という新しい取組の為、今後も登録団体数の推移等を注視しつつ、実際に登録にご協力頂いた方々の声もお聞きしながら、行政と一緒に、より利用しやすい制度となるよう取組んで行きたいと思います。

 もしお住まいの地域で同様の問題でお困りの方がいらっしゃいましたら、中原区だった場合は私でも、若しくはお住まいの行政区衛生課、又は動物愛護センターへご相談頂けたら幸いです。

 でも実は…衛生課の職員の方々は新型コロナ感染症対策も行なっている為、感染者が増えると土日返上で対応にあたっておられます。やはり、市民の暮らしの安心、安全に直結している衛生課(保健所)の更なる体制強化は必要不可欠です。

 ひきつづき。

 PS.動物愛護センターでは、常時、犬、猫等の譲渡を行なっています。ご参考まで。

https://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000031951.html

中原区にあります、動物愛護センター

 


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