とどかない支援
8月31日に本市独自支援「川崎市小規模事業者臨時給付金」の申請期間が終了となりました。この制度は、
http://www.city.kawasaki.jp/280/page/0000117639.html
「新型コロナウイルス感染症の拡大により、大きな影響を受けている市内の小規模事業者の事業継続を支えるため、市内の小規模事業者に対して給付金を交付します。」
というもので、対象者は
となっており一律10万円を支給するとうものでした。
しかし…
国の支援制度である50%以上収入が減少となった事業者が対象となる持続化給付金(法人200万円・個人事業主100万円)を受給した事業者は対象外。もし、国と市、双方の支援策を受給した場合、市の支援金は返還となります。
収入減少の割合が違うので、重ならないのではないか?と思われるかもしれませんが、問題は申請期間です。
市の事業の方が約5カ月申請期間が短い為、実際に地域の事業者からは
「コロナの影響で仕事の先行きが不透明なのに、額の低い川崎市の支援策を先に貰ったとして、もしその後、経営状況がさらに悪化して国の制度を活用したら返せってことなら、申請するのに躊躇する」
という声が。
例えばさいたま市は、本市同様に一律10万円を支給する支援制度を実施していますが、減少額(割合)に定めはなくコロナの影響で減少があれば給付の対象としています。
https://www.city.saitama.jp/002/001/008/006/011/001/p072834.html
持続化給付金を受給した方も対象になるとのこと(さいたま市の担当課で確認できました。ご対応ありがとうございました。)
さらに、さいたま市は8月6日、申請期間を9月30日まで延長を決めています。
同じ10万円を支援する制度なのに…
目的についても
川崎市「新型コロナウイルス感染症拡大により、大きな影響を受けている小規模事業者へ給付金を交付し、事業継続を支える」
さいたま市「新型コロナウイルス感染症の影響により売上げが減少している市内小規模企業者・個人事業主に対する本市独自の経済支援として給付金を支給」
事業継続、経済支援、目的としても同様のはずなのに…
対象範囲、国の持続化給付金と併せて給付の可否、申請期間の延長という柔軟な対応等、制度運用の差の大きさに驚きます。
もちろん議会でもこの制度が市から示されてから、対象範囲の拡大や、持続化給付金との同時受給を認めること、支給金額の引き上げ等、制度の改善を要望しましたが、市は応じず…。
結果
速報値とのことですが、市が想定した件数19000件に対して交付決定967件で僅か5%。もし申請された方がすでに不交付となった方を差し引き全て受給できたとしても、(1490-440)÷19000となり、たった5.5%にしかなりません。当初市は、19000件の設定基準について、5月22日の総務委員会の中で
「市内の中小事業者数が2万7,600事業所ありまして、そのうち3分の2に当たるところが、民間事業者の調査によれば、5割以上売上げが減少している事業所と売上げが減少していないという方を合計しまして3分の1程度。残る3分の2につきましては、今回対象とするところでございますが、今後の状態の悪化によって、10%から20%の方についても3割から5割にシフトしてくるということも十分考えられますので、そういったところも今回の申請期間の中で相談に乗りながら対応していきたいと考えております。」
と答弁。にも関わらず、この現状で、この支給率で、申請期間を延長することもなく、要件を緩和することもなく、
支援が全く届かぬまま、制度終了。
計上された約19億円のうち18億円は市の金庫(減債基金)へ戻されるとのこと…
実は、川崎市が行う事業で、同様の事象を散見します。
例えば、5月から始まっている「新型コロナウイルス感染症の影響により生じた失業者等を対象とした会計年度任用職員募集」は、
http://www.city.kawasaki.jp/170/page/0000097008.html
8月28時点で68人の募集に対して応募38人(採用19人)。有期雇用の会計年度職員のみではなく正規職員も、また行政が募集しているのに時給が最低賃金に少し上乗せした額はいかがなものか?(三鷹市の市営ウーバーイーツとも言われる【デリバリー三鷹】は時給1400円…)といったご指摘も受けますが、それよりなにより、とにかく周知が足りていません。聞き取りしたところによると、周知方法はインターネット公募の為、市のホームページがメインとのこと。誰が仕事を失くしてしまった瞬間に自治体のHPを見て仕事を探すでしょうか?もっと仕事がなくされた方の立場に立った、例えば、市政だよりやタウンニュース等のフリーペーパーに、また求人誌やハローワーク、キャリアサポートかわさきへ求人情報を掲載するなど、今、仕事を失い、本当に支援が必要な方へ届けるため、あらゆる周知、努力が必要ではないでしょうか。
まだあります。市内中小商業者が経営を安定化させ事業を継続することができるよう、新たに飲食物のテイクアウトやデリバリー、インターネットを活用したサービス等を始められる場合の経費を補助をするとした
「川崎中小商業者テイクアウト等参入支援事業補助金」
http://www.city.kawasaki.jp/280/page/0000118174.html
こちらもタウンニュースで申請が低調との記事が掲載され、実際にテイクアウト事業をやられている飲食店にチラシを持つて廻ってみますと…(お知らせを始めたのは8月15日からですので申請が開始されて2カ月後)
誰も知らない…今のところ、誰一人としてご存じありません…
「今、開店前で忙しいんだけど!」
と私が伺った時間が悪くお叱りを受けることもありましたが、支援策を伝えると
「ありがとう」
という声をいただきました。とにかく忙しい飲食店さんに一店でも多くこの支援策を知ってもらう為、申請が低調であるということであれば時には足を使って、直接周知するといった方法はとったのか?疑問が残ります。
まだあります(止まらなくなってきた…)。
これは議会でも取り上げましたが、昨年の東日本台風により被災された方へ対して実施された市独自の被災者支援策
「川崎市令和元年東日本台風災害支援金」
http://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000112829.html
住宅が浸水により被災された方に一律30万円を支給するという制度で、3000件を想定して9億円の補正予算が組まれました。この3000件という数字は台風直後、市の職員の方がローラー調査という形で足を使って直接被災住宅を調査し、おおよそ導き出した数字です。
しかし…
本制度の対象となりうる住家被害は2785件となっているのにも関わらず、振込件数は1871件にとどまっています。想定件数の算定も正しかった、支援策の周知も届いていた、しかし、支援が受け取れたのは6割強。被災され対象外とされた方々から多くの声が届き(詳細は当ブログで掲載しております)、支援対象の拡充を求めましたが、市は応じていません。
昨年の台風から始まり、新型コロナウイルスの感染拡大、市は
「支援します!」
と高らかに宣言しても、実態はその支援が行き届いていません。周知方法が悪いのか、制度設計が悪いのか、実は届けたくないのか、
やっているフリなのか?
と勘繰ってしまうほど、大きな疑問を感じます。
行政側も一生懸命取組んでいると思います。しかし万能ではありません。周知方法などで改善が図れるのであれば、ぜひ取組んで頂きたいと思いますし、私も微力ながら可能な範囲でご協力できればと思います。しかし、小規模事業者臨時給付金については、どうしても要件の緩和ができないのであれば、例えば国の持続化給付金の申請締切1月31日より後の期日となる申請締切日を3月31日まで延ばすなど、何の変更もせずに、想定の5%の支給で支援を終わらせてしまうことは看過できません。
正直、愚策と指摘されても致し方ありません。
議員としてまだ1年ちょっとですが、台風被害から市の独自支援策の推移をチェックしていると、対象者を想定して予算を組みながら、実は支援が届かないという川崎市の制度設計のクセが少し見えてきました。
だから議会での議論が重要です。市から提案された様々な議案(政策)に対し、そもそも目的はなんなのか?その為にどのような対象者を想定をし、どういった制度設計にするのか?本当にその政策で必要な方へ支援が行き届くのか?逆に不利益にならないのか?きめ細かくチェックし、不十分な点があれば改善を求め続けていく。
その為にも、川崎市で暮らす皆様の声が必要です。
皆様の声や実態を行政に届ける。結局、後にも先にも議員の仕事はこれに尽きるのかと思います。
まだまだ若輩者ですが、引き続きなんなりと皆様の声を、お申し付け頂ければ幸いです。
無論批判ばかりでなく、建設的に、行政側と協力しながら、より良い政策の実現に向け取組んで参りたいと思います。
長々と失礼いたしました。